日本国内のあらゆるシステムがクラウド化している中で、社内で運用されているPBXも徐々にクラウドに置き換わりつつあります。そこで、「クラウドPBXの導入を検討しているが、他の企業がすでに導入しているかを知りたい」「PBXの中でどの程度のシェアを持っているのかが気になる」といった考えを持っている経営者の方が多いのではないでしょうか。
この記事ではクラウドPBXの市場シェアや今後の展望について解説していきます。おすすめのクラウドPBXについても紹介していますので、ぜひ最後まで読み進めてください。
クラウドPBXとは
PBX(Private Branch Exchange)とは、オフィスに設置される電話回線交換機のことであり、転送制御機能や着信制御機能、保留制御機能などを持っている点が特徴です。複数の拠点でスムーズに電話を管理するために導入され、現代では多くの企業に採用されています。PBXを取り入れることで、顧客対応のクオリティ向上やオペレーター業務の効率化などが図れるでしょう。
クラウド型PBXは、PBXをインターネット上で管理するシステムです。従来の電話回線の代わりにインターネット回線を利用しつつ、内線や外線、転送などの電話機能がそのまま使えます。インターネットを介するため、従来使っていたPCやスマートフォンをそのままビジネスフォンとして利用できる点が大きな特徴です。社内外のスムーズな電話応対やテレワーク促進を実現させています。
クラウドPBXの市場シェアと今後の動向
クラウドPBXは近年になって登場したサービスですが、従来のPBXが持つ機能を踏襲しつつ、さらに利便性を高めたシステムとして注目を集めています。徐々に認知を広げているクラウドPBXですが、現在の市場シェアはどのようになっているのでしょうか。今後の動向と併せて解説します。
市場シェア
2022年現在、クラウドPBXシェアを示す正確なデータは存在しません。クラウドPBXは2010年代になって登場したサービスであるため、資料やデータが乏しい状況です。唯一、クラウドPBXのシェアに関する2011年・2012年の情報が、アメリカの調査機関Parallels社によって公開されています。
同社の調査によると、2011年段階でクラウドPBXの日本国内でのシェア率はわずか1%ほどでした。一般的な電話回線や社内PBXが大多数を占める中で、クラウドPBXの認知自体がそれほど進んでいなかったのです。同調査では、この結果に対して「ホスト型 PBX(クラウド型PBX))は世界のどの地域でも比較的新しいサービスであるため、この普及率の低さは予想外ではありません」と結論づけています。
また、2011年段階でクラウドPBXのシェア率は企業規模ごとに以下のような差がありました。
・マイクロ SMB(従業員 1 ~ 9 名)→シェア率0%
・小規模 SMB(従業員 10 ~ 49 名)→シェア率3%
・大規模 SMB(従業員 50 ~ 250 名)→シェア率13%
2011年当時は、従業員50名以上の会社がメインでクラウドPBXを使用していたようです。企業規模が小さくなるにつれてサービスの認知がされていない点が課題であり、調査では「唯一の障壁と考えられるのが情報不足です。日本では、50% もの SMB がホスト型 PBX を全く知らないと回答しています」と懸念が示されています。しかし「これらの SMBの 20% は、今後 3 年以内にホスト型 PBX を追加する計画があるか、それを検討する可能性があると回答しています」とも示しており、導入企業の増加が示唆されました。
2011年段階ではわずか1%ほどであったクラウドPBXのシェア率ですが、2020年時点においては約5%と予測されています。この数字に明確な根拠はありませんが、クラウドPBXが含まれる「クラウドサービス」の普及率が伸びている点からの予測です。
2021年に総務省が発表した通信利用動向調査によると、2020年段階では68.7%の企業がクラウドサービスを利用しています。この数値が年々伸びていることから、間接的にクラウドPBXの需要が増している事実が浮かび上がってくるでしょう。
出典
2011 年版 増益を目指すフルサービスプロバイダのための手引き Parallels SMB Cloud InsightsTM 日本版
今後の動向
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会が2020年に発刊した『通信機器中期需要予測[2020年度~2025年度]』によると、新型コロナウイルスの蔓延によって引き起こされたワークスタイルの変化によって、従来のPBXやコードレスホンの需要は減少していくだろうと予測されています。
同資料では「大企業を中心に音声コミュニケーションを基盤とした再構築が検討される」「どこでもコミュニケーションを取れるようにするため、クラウドとの連携やスマートフォンの内線アプリの利用などが進む」といった展望が示されました。
現在、中小企業から大企業にいたるまでテレワークが広がっているため、今後もクラウドPBXの利用率が伸びていくことが予測されます。さらに、近年様々な企業によってクラウドPBXがリリースされており、機能も拡張され続けている点からもさらなる需要増加が見込まれます。
出典
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会『通信機器中期需要予測[2020年度~2025年度]』
クラウドPBXのシェアが伸びている理由
クラウドPBXのシェアは、利便性やテレワーク推進などの外的要因が組み合わさり、年々伸びています。これからもクラウドPBXのシェアは拡大を続けていくでしょう。ここからは、その具体的な理由を3点解説していきます。
PCやスマホをビジネスフォンとして利用できる
クラウドPBXのシェアが伸びている理由の一つとして、PCやスマートフォンをビジネスフォンとして利用できる点が挙げられます。顧客電話帳共有機能や通話録音機能、内線機能、留守電機能などビジネスフォンに必要な機能をそのまま各端末で利用できるため、簡単に運用できる点が特徴と言えるでしょう。
テレワークの推進に伴って近年増えつつあるBYOD(自分のPCやスマートフォンを業務利用すること)にも対応可能です。導入に伴って新たに端末を購入する必要がないため、コスト面においても大きなメリットを発揮します。
テレワークの推進
働き方改革や新型コロナウイルスの拡大により、近年テレワークの普及が急速に進んでいます。テレワークの導入にあたっては今なお多くの課題がありますが、クラウドPBXが課題解決の糸口になる点もシェアを伸ばしている要因です。
例えば「従業員の稼働管理ができない」など、テレワークが抱える課題もクラウドPBXの採用によって解決できます。クラウドPBXは従業員の通話状況を把握できる機能を持っているため、同時に稼働状況の管理も可能です。
その他、クラウドPBXを導入すれば、自宅から会社宛の電話に出られるようになるでしょう。テレワークを積極的に取り入れたいと考えている企業に、クラウドPBXの導入は欠かせません。
導入まで時間と手間がかからない気軽さ
クラウドPBXはPCやスマートフォン、そしてインターネット環境があれば利用開始できるため、導入ハードルは非常に低い傾向にあります。
また、クラウドPBXはクラウドサービスの一種であるため、利用開始の際に工事をする必要はありません。選定するサービスにもよりますが、導入完了まで1週間以上かからないことが一般的です。
コロナ禍で急遽テレワークを導入しなければならなくなった、という緊急の場合にもスムーズな運用開始が実現されるでしょう。
国内の主なクラウドPBXサービス
電話を用いてスムーズに社内外のコミュニケーションを取りたい、時代の流れに合わせてテレワークを推進したい場合などには、クラウドPBXの導入が欠かせません。クラウドPBXは様々な企業によって多くのサービスがリリースされているため、導入目的に合わせて最適なシステムを選ぶ必要があります。
ここからは代表的なクラウドPBXサービスについて解説していきますので、どのサービスを導入するか選定する際の参考としてください。
トビラフォンCloud
トビラシステムズ株式会社がリリースしている「トビラフォンCloud」は、通話録音機能や連絡先管理機能などクラウドPBXに求められる機能を一通り有しています。さらに、元々社内で運用していたスマートフォンや社員が個人所有しているスマートフォンにアプリをインストールするだけで利用できるため、導入がスムーズです。
契約してから最短で翌営業日からサービス利用できるため、即座に運用を切り替えたい場合にも不自由しません。初期費用33,000円、月額料金3,300円/セットにて利用可能です。
MiiTel
株式会社RevCommがリリースしているクラウドPBX「MiiTel」は、IP電話と録音機能、文字起こし機能、音声解析機能などが一つのツールに集約されている点が特徴です。通話内容をAIで分析して点数化する機能も付随しているため、コールセンター全体の対応力を上げたい場合などに向いているでしょう。その他、テレアポ率を向上させたい営業会社などにもおすすめです。
初期費用0円、月額料金5,980円/IDにて利用可能なシステムです。10ID以下を単月で契約する場合は事務手数料が発生します。
ひかりクラウドPBX
「ひかりクラウドPBX」は、東日本電信電話株式会社によって提供されているクラウドPBXです。クラウドPBXの特徴である、スマートフォンを用いた内線通話や代表電話番号で発着信など基本的な機能を一通り有しています。同社独自のサービスである「まるらくオフィス」と組み合わせることで、クラウドPBXの導入だけでなく光アクセスサービスやWi-Fi環境、情報セキュリティ対策などの対応をまとめて依頼可能です。
10IDパックプランを使った場合、初期費用24,750円、月額料金20,955円になります。無料トライアルも用意されているため、まずはどのようなサービスか試してみるのもいいでしょう。
MOT TEL
「MOT TEL」は、株式会社バルテックによってリリースされているクラウドPBXです。同サービスは発信する番号をアプリで簡単に切り替えられる点が特徴で、個人所有しているスマートフォンを業務に転用できます。専用アプリからは会社番号で発信、私用電話は個人番号で発信することで使い分けが可能です。
端末にアプリをインストールするだけで利用できるため、導入が手軽な点も魅力といえるでしょう。20内線・10チャネルまで対応しているプランの場合は、初期費用29,800円、月額料金3,980円になります。いつでも解約できる点も特徴で、期間を定めた縛りなどもありません。
UNIVOICE
トラムシステム株式会社がリリースしているクラウドPBX「UNIVOICE」は、パーク保留機能や代理応答機能など従来のPBX機能を搭載しつつ、高レベルの音声通話を実現させたサービスです。2022年1月時点で導入実績は3,000社以上に及んでおり、数多くの企業に採用されています。
1〜30名での利用に向いているEssentialプランの場合は、初期費用0円、月額料金1,200円で利用可能です。
Good Line
「Good Line」は、株式会社グッドリレーションズによって提供されているクラウドPBXです。通常クラウドPBXが持つ基本的な機能を搭載しているだけでなく、SlackやChatwork、Microsoft Teamsといったチャットシステムとの連携も可能な点が特徴といえるでしょう。通話分析やモニタリング機能なども付随しているため、電話応対のクオリティを高めたいケースにも対応可能です。
小規模向けプラン「GoodLine SOHO」の場合、初期費用20,000円、月額料金3,000円/2内線がそれぞれ発生します。
クラウドPBXを導入して業務効率化を図りましょう
あらゆるシステムがクラウドに置き換わっていく時代に突入していますが、その流れの中でクラウドPBXの重要性も年々上昇しつつあります。自社の体制に合ったシステムを選び、導入の体制を整えることで、業務効率化やユーザーサポートの充実が期待できるでしょう。徐々にシェアも伸ばしているため、早い段階での導入がおすすめです。導入を検討する際には、取り入れる目的を明確にした上で、その目的を達成できるサービスを選びましょう。コストや得られるメリットなどの比較検討が重要です。
どのクラウドPBXを採用するかお悩みの方は、ぜひ「トビラフォンCloud」をご検討ください。業務効率化が期待できる機能に加え、元々使っていたスマートフォンにアプリをインストールするだけで利用可能な点が大きな特徴です。月額使用料も1セット3,300円と比較的安価であるため、コストを抑えたいケースにも向いています。まずは一度無料トライアルをお試しください。