「電話恐怖症」という言葉を聞いたことはありますか?
最近の若者は電話に対する苦手意識が強い傾向にあるようですが、その理由とはなんでしょうか。
最悪の場合、電話対応が嫌で退職するというケースにまで発展してしまうようです。
とかくおざなりになりがちな電話対応教育ですが、準備など怠ってしまうと教育を受ける側も会社にとっても大きなダメージとなりかねません。
これから新人を迎える教育担当の方は、しっかりと準備をして教育に臨む必要があります。
うまくいく指導方法について解説していきますので、是非参考にしてください。
最近の新人が電話対応に対して苦手意識を持つ理由
携帯電話が普及した今、電話応対が苦手という世代が増えてきました。
電話恐怖症という言葉もできてしまうほど深刻な問題でもあります。
なぜ電話に対して苦手意識を持つようになってしまったのか。
電話業務に嫌気がさして退職してしまう事例もあります。
頭ごなしに叱るように指導するだけでは何も生み出せません。
なぜ電話が苦手なのか、まずはその理由を理解するところから始め、新人に寄り添った指導ができるよう学んでおきましょう。
幼少期から電話を掛ける習慣がない
今の新入社員世代は、物心がついた頃には携帯電話が普及している時代に育ってきました。
個人専用の携帯電話は、知り合い、友達、家族などとしか通話する機会がほとんどです。
そのため、見ず知らずの人と電話をするということに対して圧倒的に経験値が少なく慣れていないのが現状です。
さらに昨今ではチャットアプリも普及し、人と直接会話をする機会も減少しています。
それゆえスキルのないまま取引先や顧客との会話はどうしたらいいのかがわからず、常に緊張状態にさらされてしまい苦手意識が強くなるのです。
正しい言葉遣いが分からない
社会に出たばかりの新人は、それまであまり敬語を使う機会がなかったというのも原因のひとつです。
部活動での上下関係や、教師に対してはある程度の敬語を学んできてはいることでしょう。
ただ、慣れ親しんだ仲で使われてきた敬語が、社会に出ても通用するのかどうかの不安は拭えません。
新人は使い慣れていない敬語をうまく操れないこともあり、仕事の電話でどうしたらいいのかわからなくなってしまうこともあります。
慣れてない環境では余計に神経質になり、間違った敬語を使ってしまったらあとでクレームになるのではないかなどと不安になってしまうことも原因となります。
電話の相手に聞き返しても良いのか不安
電話をする時は周りが静かであるとは限りません。また相手の声も小さい場合があります。
聞き取りづらかった際に、何度も聞き返してしまい叱られてしまうこともあるでしょう。
そういった経験から聞き返すこと自体が悪いことであるかのような錯覚に陥ってしまい、聞きこぼした部分を残したまま会話を終わらせてしまうこともあります。
上司などに伝言が必要な場合、さらに叱られてしまうということにもなりかねません。
いかに相手に不快な思いをさせないか、どういう言葉遣いで聞き返すことが正解なのかがわからずに不安になってしまうのも苦手意識を持ってしまう原因です。
新人にまず教える電話対応の心得
本来してほしい業務を教える前に、電話対応に躓いてしまわぬようステップを踏んで基本的なことから教えていくことが大切です。
マニュアルを渡して一度にすべての対応を求めてしまうと混乱を生じてしまいます。
まずは土台作りから、という意識を持って指導にあたりましょう。
メモと筆記用具を用意する
まずは初歩的なところからメモの用意です。
常に目の前にはメモ帳と筆記用具を用意し、重要なことはすぐにメモできるようにしておく準備をさせましょう。
ただ、闇雲にメモをしていては会話に置いてかれたり本当に重要な部分を聞き逃したりしかねません。
指導する際には、基本的な「社名・部署名・氏名・用件」が必要であることを伝えます。
用件ばかりに気が向いてしまい、誰からの電話かがわからないといったことなどにならないようにポイントをしぼって伝えることが大切です。
ヒアリングに必要な項目を表にしたフォーマットを作成し、印刷したものを用意しておくのも効果的です。
言葉遣いを気にし過ぎない
失礼なことを言ってしまわないように考えすぎたり、敬語の使い方や言い回しなどの言葉遣いを気にし過ぎたりしていると不自然な会話になってしまい、相手にとってみれば失礼な態度となってしまことがあります。
また考えすぎて無言になってしまうケースもあり、相手を不安にさせてしまうことも。
言葉選びに神経質になりすぎてもこのような結果となってしまうこともあることを理解しておいてください。
相手からすれば電話に慣れていないことはすぐにわかります。
丁寧に伝えたいことをしっかりと伝え、きちんと相手の話を聞く姿勢であれば理解は得られることがほとんどなため、無理はしないでいいということも伝えることが大事です。
「ほうれんそう」を心掛けること
丁寧に対応を進め、相手を不快にさせずに会話をできるようになったら次は内容についてです。
新人という立場上、相手からの質問には正しく答えられないことがほとんどです。
その場では回答をせず一旦「分かる者が不在のため確認して折り返します」や「上司に相談します」などとして明言を避けるように促してください。
電話の保留機能を使って、上司に相談・確認することや、電話を取り次ぐことができる環境作りも大切です。
また、誰からの電話でどういった用件だったのか、何か不明点はないか、など「ほうれんそう」も忘れないように指導しましょう。
新人に教えるべき電話対応の基本の流れ
普段家族や友人と電話をするのとは大きく異なります。
相手を敬うことが大前提となり、思いもよらないことで顧客の信頼を失ったり、機会損失へと繋がったりします。
一言一句覚えることがあるというわけではありませんが、心構えなど気を付ける必要があります。
電話をかけるとき
・相手の業務内容を確認し、邪魔にならない時間帯を選ぶ。
・会話内容を忘れないようにメモの準備をしておく。
・手短にと指示されたり留守番電話に繋がったりすることを想定し、用件をまとめておく。
・電話が繋がったらまずは自分から名乗る。
・声のトーンはいつもより高めに。
・今電話しても大丈夫かどうかの確認をする。
・敬語を忘れずに会話を心掛ける。難しい場合はできる限り丁寧な口調で。
・電話を切るときは相手が先に切るのを待つ。
夜間の電話はもちろんのこと、お昼休みに電話をかけるのは控えましょう。
特に夜間の場合は失礼にもあたり、業務時間外のこともあります。
会話中は相手の話をさえぎらず、何度も聞き返すことのないようしっかりと耳を傾けましょう。
また、親しくなってくるとつい家族や友達と会話をしているのと同じ言葉遣いが出てきがちです。
親しくとも礼儀を欠くと思わぬクレームになりかねたいため注意が必要です。
電話を受けるとき
・3コール以内に電話に出る。
・電話が繋がったらまずは自分から名乗る。(社名・部署・名前)
・聞き直しが発生しないよう、周囲の雑音などに注意する。
・用件は具体的に聞き出し確認する。
・折り返しが必要な場合は連絡先を聞き出し、必ず復唱する。
メモの準備や敬語(丁寧な口調)を心掛けるのは、電話をかけるときと同様です。
逆に名乗るのはいつも自分からという気持ちで、電話を受けるときも先に名乗るよう心掛けましょう。
ポイントは3コール以内に電話に出る、という部分です。
それ以上かかってしまうと、電話をおろそかにする会社だと思われたり、待たされる会社なんだなという判断をされかねません。
なるべくスピーディに電話を取れるよう、電話は常に身のそばにある状態にしておきましょう。
新人に電話対応を教える時のコツ
初めての電話対応では誰もが緊張するものです。
まずはその緊張をほぐすために何をしたらいいのかを考えるのがポイントです。
また、完璧を求めるのもご法度であり、過去に自身が失敗したケースを思い出し相手に寄り添う指導を行いましょう。
新人に指導する上で大切なのは、「完璧」な対応ではなく「丁寧」な対応であることを伝えるということ。
完璧ではなくても丁寧な対応であれば、その気持ちは相手に伝わりクレームはトラブルなどに発展することは抑えられるものです。
電話対応を通じて学べることやメリットを教える
電話対応は、自分が働いている会社がどのような顧客を抱えているかを知ることのできる第一歩となります。
顧客の社名・名前、どういった関係性の会社なのかをが、覚えていくことのできる大事な業務です。
また、担当者への取り次ぎも行うため、誰がどのような仕事をしているのかや部署や名前を覚えるきっかけにもなります。
電話での対応は、言葉のキャッチボールです。
相手の言ったことに対して適切な回答をしたり、自分から話を振ったりと、間を空けずにテンポよく会話を進める必要があるため、経験を積むことであらゆる場面において瞬時に対応していく力が身についていきます。
マニュアルや顧客リストを用意しておく
あらかじめ不安を取り除いておくために、電話対応マニュアルを用意しておくのもよいでしょう。
電話の受け方、電話のかけ方、クレーム発生時の対応の仕方などを作成し、事前に確認してもらうことで、いざとなった時に慌てず対処することができます。
特にクレーム対応となると、新人ではどう対処していいかわからない場面が多くなります。
「上司に確認します」や「わかる者に代わります」「少々お待ちください」などといった回避方法を知っておくだけでも不安は取り除かれます。
また、はじめにマニュアルを渡しておくことで、教育係となる担当者の時間を節約でき、精神的負担も軽減されます。
顧客リストも用意しておくと安心です。
相手の立場や自社との関係性を把握することができるという点と、電話対応中にどこの誰と話しているかを確認できる点で安心です。
新人の場合、会話に集中しすぎて取り次ぎの際に名前を思い出せなくなることがあります。
あらためて聞き直すのは大変失礼にあたるので、今誰と会話をしているかがわかるように顧客リストも手元に用意しておくといいでしょう。
電話対応にも責任があることを意識させる
電話対応は、いわば会社全体の窓口です。
対応の良し悪しがそのまま会社のイメージに繋がるため、失礼のない丁寧な対応を心掛ける必要があります。
相手が取引先であれば、場合によっては機会損失になってしまうこともあります。
相手は名前を告げるだけでどういった立場なのかわからないこともあります。
新人は電話に慣れていないとはいえ、責任感を持った対応をさせるよう研修中にしっかりと指導しましょう。
初めのうちは失敗して構わないことをきちんと伝える
窓口となる電話対応は責任の伴う業務です。
しかしながら新人であれば緊張による失敗や思わぬミスや失言をしてしまうこともあります。
まずは何かあった場合にフォローをする体制があること、問題があればすぐに電話を代わることができるということを伝えてください。
逃げ場がないまま電話対応をすると苦手意識が芽生えてしまい、うまく成長することができなくなってしまいます。
失敗しても助けがあるとわかれば安心して対応もできますし、過剰な緊張も解けていきます。
また誰もがそうであったと自身の失敗談を話すことでコミュニケーションを深め、それが緊張がほぐれることに繋がります。
新人向け電話対応マニュアルの作り方
ひとことでマニュアルと言ってもどういったものが理想的でしょうか。
闇雲にあらゆるケースを用いてマニュアル化したところで混乱してしまうのがオチです。
熟練者であっても多大な資料を読み込んで覚えるのは至難の技です。
ポイントを絞ってわかりやすいもの・使いやすいものを作成するよう心掛けましょう。
マニュアル作成前にマニュアル化する事柄を整理する
まずは自社における電話業務の流れを確認し、マニュアル化する事柄を整理していきます。
一般的には以下の3項目がおおまかなカテゴリです。
・電話のかけ方
・電話の受け方
・クレーム対応の仕方
マニュアル作成時に重要なのは、テキストだけではなく図式化したものを作成するという点です。
電話の流れをマニュアル化する場合はフローチャートとしてまとめておくと、どういった場合にどういった対応をするべきかを早く見つけることができ、対応もスムーズになります。
トークスクリプトを取り入れる
トークスクリプトとは、いわゆる電話応対における台本です。
どういった順番でどういった回答や会話をするのかといったことを取りまとめたものです。
質問内容などが枝分かれ項目になっており、「これを聞かれたらこれを回答する」といったあらかじめ想定される典型的な質問などをツリー式に表にまとめたイメージです。
専門的な質問があった場合も、あらかじめ用意しておくことで取り次ぐことなく回答できるメリットもあります。
新人であっても、手順を踏むことで適切でスムーズな電話応対を実現することが可能です。
複雑化しないよう分かりやすいものをいくつかパターンを分けて用意しておくことをおすすめします。
運用と改善を繰り返す
電話相手は多種多用なため用意したトークスクリプトだけでは対応できない場面もでてきます。
実際に利用した人の意見を聞き、使いやすいものは残し不要なものは削除、改善が必要なものは都度変更し利便性の高いものを作り上げていきましょう。
また、ベテランが作る場合は新人の感じている違和感などが反映されていないこともあります。
新人の意見も取り入れながら改善を繰り返していきましょう。
冒頭に電話対応のマナーを記載する
トークスクリプトだけでは対応できない部分もあります。
電話対応におけるマナーを記載しておくのもおすすめです。
・電話を受けるときは3コール以内に出る。
・電話を受けたらまずお礼を述べる。
・会社名、名前を告げる。
・上司や先輩の名前を出すときは敬称をつけず呼び捨てにする。
・相手の言ったことは特に大事な内容である場合復唱するようにする。
などです。
固定電話の場合、電話の切り方も注意が必要です。
受話器を置くのではなく、静かにフックを指で押さえてから受話器を置くようにするといったことも記載しましょう。
相手が電話を切ってから切る、というのがマナーですが相手も同じように考えていることもあります。
長時間無言で繋がったままでは不自然ですので、そういった場合に自ら切る場合は、ガチャっという音で相手に悪い印象を与えないことになります。
間違えやすい敬語・言い回しをリスト化する
若者言葉という文化もありますが、ビジネスにおいては通用しないことがほとんどです。
間違った敬語を覚えてしまい、そのまま社会で使うと意図した意味が伝わらずトラブルになる可能性もあります。
気を付けなければいけない間違った敬語はリスト化しておき、新人が電話デビューする前に対策しておきましょう。
一部紹介します。
例:
誤「問題ないようでしたら~~~」
正「差し支えなければ~~~」
誤「了解致しました」
正「承知致しました」
誤「お休みをいただいております」
正「休みを取っております」
などです。
普段使っている言葉に違和感を持っていたり、気になったりしているようでしたら調べておきましょう。
電話業務をスムーズに遂行するために
電話業務は新社会人にとっての登竜門であり、最初に触れるビジネスマナーを学ぶ場でもあります。
もちろんベテランであっても常にと言っていいくらい必要な電話対応。
古き慣習で「電話対応は新人のやることだ」と思っていると、本人のみならず会社にも損害を与えてしまいます。
新しく入社した新社会人を電話恐怖症にさせないためにも、電話対応についてしっかり学び配慮の行き届いた指導をしていく必要があります。
電話業務が嫌で退職してしまう、という結果を生み出さないためにも今一度指導方法について社内で議論する必要性があるのではないでしょうか。