
「ビジュアルIVR」という言葉を聞いたことはあるものの、その仕組みやメリットについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?従来の音声自動応答システムとは異なり、ビジュアルIVRはインターネットを活用して柔軟かつ効率的なコミュニケーションを実現します。そして、ユーザーは視覚的に直感的な操作が可能になり、利便性が飛躍的に向上します。本記事では、ビジュアルIVRの基本からメリット・デメリット、従来のIVRとの違い、さらにはコストパフォーマンスについて詳しく解説します。
ビジュアルIVRとは
ビジュアルIVRは、従来の音声自動応答システム(IVR)を進化させ、ユーザーがスマートフォンで視覚的に操作できるようにしたシステムです。ユーザーは直感的にメニューを選択し、必要な情報やサービスに迅速にアクセスすることができます。
ビジュアルIVRの基本構造と仕組み
ビジュアルIVRの基本構造は、従来の音声ガイダンスに視覚的なメニュー画面の要素を組み合わせた顧客対応システムです。
ユーザーは音声案内を聞きながら、画面上の選択肢をタップやクリックすることで、目的の情報やサービスにアクセスできます。
従来の音声のみのIVRと比較して、SMSなどを利用してWebサイトに誘導することで、多様な情報(場合によってはピンポイントな情報)を視覚的に案内することができ、ユーザーのストレスを軽減し、必要な情報へ簡単にアクセスできるようになっています。
利用シーン
コールセンターでは、顧客が問い合わせ内容を視覚的に選択することで適切な担当者へスムーズに接続したり、混雑時には顧客をウェブサイトへ誘導したりします。
またFAQやチャットサポートへ繋げることで、待ち時間を減らしつつ自己解決を促進することで、オペレーターの負荷軽減にもつながります。
ビジュアルIVRは様々な業界での活用が進み、問い合わせ対応を効率化したり、カスタマーサポートの待ち時間を大幅に短縮したりすることに成功しています。
いくつか事例をご紹介します。
ビジュアルIVRの導入事例
ビジュアルIVRの導入により、顧客満足度の向上やオペレーターの負荷軽減といった効果が期待できます。
具体的な導入事例として、2018年セブン銀行では海外送金サービスに関する問い合わせ対応のためにビジュアルIVRを導入し、多言語に対応させました。
スマートフォン画面に電話・チャットでのお問い合わせのほか、折返し電話予約等のメニューを表示することで希望のサポートメニューを簡単に見つけることができるようになり、電話の待ち時間解消や疑問解決に最適な選択をすることができるようになっています。
また、2020年カゴメ株式会社は通販サイトにビジュアルIVRを導入し、商品の注文や登録情報の変更、FAQの確認など目的に合わせた最適なメニューを選択することが可能です。
その他、ビジュアルIVRの導入により、顧客の自己解決率が向上し、コールセンターへの問い合わせ件数が減少した事例もあります。
ビジュアルIVRの進化と今後の展開
ビジュアルIVRは、AIや音声認識技術の進化とともに、より自然な対話や高度な機能を備えるようになっています。
今後はさらに多くの業界での採用が予想され、CRM連携やリアルタイムの顧客分析などさらなる発展が期待されており、よりパーソナライズされたサポートを提供できるようになるでしょう。
では、もう少しビジュアルIVRの詳細を掘り下げてみましょう。
次は、ビジュアルIVRの主なメリットとデメリットを詳しく解説します。
ビジュアルIVRのメリット
ビジュアルIVRは、視覚的なインターフェースを通じてユーザーと企業をつなぐシステムであり、多くのメリットを提供します。
顧客満足度の向上
ビジュアルIVRは、ユーザーがスマートフォンやPCの画面上で直感的に操作できるため、従来の音声案内に比べてストレスが少なく、迅速に問題を解決に導くことが可能です。
従来のIVRに比べ、より広範囲のユーザーが利用しやすい環境を提供できる可能性を持っています。
コスト削減効果
ビジュアルIVRの導入により、オペレーターの業務負荷が軽減され、人件費の削減や業務効率化が図れます。また、24時間対応が可能となるため、営業時間外の問い合わせにも対応でき、機会損失を防ぐことができます。
さらには顧客自身が直接情報入力や選択を行うことで、誤入力や誤操作のリスクを減少させることも見込まれます。
柔軟なカスタマイズ性
ビジュアルIVRは、企業のニーズに合わせてメニュー構成やデザインを柔軟にカスタマイズできます。
顧客に合わせたインターフェースを設計することで、ブランドイメージの向上やユーザーエクスペリエンスの最適化が可能です。
使いやすさとアクセスの容易さ
視覚的なメニュー表示により、ユーザーは音声案内を最後まで聞く必要がなく、直感的に操作・選択することができます。
また、いつでもスマートフォンやPCからアクセスできるため、自分の都合に合わせてサービスを好きな時に利用できるという面においても利便性が高まります。
分析とレポート機能の充実
ビジュアルIVRは、ユーザーの操作履歴や選択データを収集・分析することが可能です。
これにより、顧客のニーズや行動パターンを把握し、サービス改善やマーケティング戦略の立案に役立てることができます。
ビジュアルIVRのデメリット
ビジュアルIVRには、多くのメリットがあるとわかりました。
しかし、導入に際してはデメリットや注意点も存在します。
以下に、ビジュアルIVRの主なデメリットを詳しく解説します。
初期費用と管理コスト
ビジュアルIVRの導入には、初期費用や運用コストがかかります。特に、専用アプリの開発や高度なカスタマイズを行う場合、初期費用が数十万~数千万円、月額費用が数万~数十万円に上ることがあります。そのため、コールセンターの規模や状況に応じて、導入効果を慎重に見極める必要があります。
技術的な導入ハードル
ビジュアルIVRの導入には、システム構築や既存システムとの連携など、技術的な課題が伴います。特にオンプレミス型の場合、環境構築に数カ月以上の時間がかかることや、保守管理の負担が増える可能性があります。また、専用アプリの開発やインストールが必要な場合、ユーザー側の手間も増えるため、導入前に十分な検討が必要です。
特定分野での反応の良し悪し
ビジュアルIVRは、スマートフォンの操作に慣れているユーザーには便利ですが、デジタルデバイスの操作に不慣れなユーザーや高齢者にとっては、操作が難しく感じられる場合があります。また、視覚的な情報提供が主となるため、視力に問題を抱えるユーザーには適さない可能性もあります。そのため、ユーザー層に応じたサポート体制の整備が求められます。
データプライバシーへの配慮
ビジュアルIVRでは、ユーザーの操作履歴や入力情報など、多くのデータを収集・管理します。これらのデータは、サービス向上やマーケティングに活用できますが、同時にデータ漏えいのリスクも伴います。適切なセキュリティ対策やプライバシーポリシーの策定が不可欠です。
操作性の複雑さ
ビジュアルIVRは、多機能であるがゆえに、ユーザーインターフェースが複雑化し、操作が難しくなる可能性があります。特にメニュー構成が煩雑であったり、選択肢が多かったりする場合、ユーザーが迷ってしまいかえってストレスを感じることがあります。そのため、シンプルで直感的なデザインや導線設計が重要となります。
ビジュアルIVRの導入を検討する際は、これらのデメリットも十分に考慮し、自社のニーズや顧客層に適したシステムを選定することが重要です。
ビジュアルIVRと従来のIVRの違い
ビジュアルIVRと従来のIVRは、ユーザーインターフェースや機能面で大きく異なります。以下に、両者の違いを詳しく解説します。
インターフェースの違い
従来のIVR(Interactive Voice Response)は、音声ガイダンスを通じてユーザーに案内を行い、プッシュボタン操作で選択を行うシステムです。一方、ビジュアルIVRは、スマートフォンの画面上に視覚的なメニューを表示し、ユーザーがタップやクリックで直接選択できるシステムです。
ユーザーは音声を最後まで聞く必要がなく、より直感的な操作ができます。
ユーザーエクスペリエンスの差異
ビジュアルIVRは、視覚的なメニュー表示で確認できる点で、すぐに理解しやすいといった特徴を持っています。
そのため、ユーザーは必要な情報やサービスに素早くアクセスすることができるのです。
従来のIVRでは、音声ガイダンスを最後まで聞く必要があり、操作に時間がかかるものでしたが、ビジュアルIVRでは最終的な回答や担当オペレーターにたどり着くまでもなく短時間での自己解決を期待できます。
技術的な基盤の違い
従来のIVRは、電話回線を通じて音声ガイダンスとプッシュボタン操作で情報を提供していました。
対してビジュアルIVRは、Webサイトやアプリを通じて視覚的なメニューを提供し、ユーザーはインターネットを介してアクセスします。
(ビジュアルIVRは顧客管理システムやCRMとの連携を行うことができます)
各種機能比較
ビジュアルIVRは、視覚的なメニュー表示に加え、FAQやチャットボット、会員サイトなどへの誘導が可能なため、ユーザーは自己解決を図りやすくなります。一方、従来のIVRは音声ガイダンスとプッシュボタン操作が主であり、情報提供や担当オペレーターへの転送が主な機能となります。
ビジュアルIVRと従来のIVRの違いを理解し、自社のニーズや顧客層に適したシステムを選定することが重要です。
ビジュアルIVRの料金とカスタマイズ性
ビジュアルIVRの導入を検討する際、料金体系やカスタマイズ性は重要なポイントとなります。こちらについても解説します。
料金モデルの紹介
ビジュアルIVRの料金モデルは、主に初期費用と月額費用で構成されています。初期費用はシステムのセットアップや導入にかかる費用で、月額費用は運用やサポートにかかる継続的な費用です。具体的な金額は、提供する事業者や導入する機能の範囲によって異なります。
前述したように、一般的には初期費用は数十万~数千万円、月額費用が数万~数十万円程度とされています。
サービス事業者によってはより高額なもの、反対に初期費用が無料で提供されるケースもあるため、確認が必要です。
コストパフォーマンスの分析
ビジュアルIVRの導入により、顧客対応の効率化やオペレーターの負荷軽減が期待されるという点で、長期的に見ると人件費の削減や顧客満足度の向上といった効果が見込めます。
初期費用や月額費用は発生しますが、これらの効果を考慮するとコストパフォーマンスの高い投資といえるのではないでしょうか。
カスタマイズオプションの種類
ビジュアルIVRは、高いカスタマイズ性を持っており、企業のニーズに合わせて柔軟に変更が可能です。
例えば、メニューの配置やデザイン、シナリオの分岐などを簡単に編集できる機能を備えたサービスがあります。
特に、ドラッグ&ドロップで直感的に操作できる管理画面を持つサービスは、専門的な知識がなくても容易にカスタマイズが可能です。
他ソリューションとの比較
ビジュアルIVRは、従来の音声のみのIVRと比較して、視覚的なインターフェースによりユーザーの操作性が向上します。また、クラウド型のビジュアルIVRは、物理的なオンプレミス型と比べて初期費用や導入期間を抑えられるメリットがあります。
長期的な費用対効果
ビジュアルIVRの導入によって問い合わせ件数が減少することで、オペレーターの人件費や運用コストの削減が期待できます。また、顧客満足度の向上により、リピーターの増加や売上の向上といった長期的な効果も見込めます。
これらを総合的に考慮すると、ビジュアルIVRの導入は費用対効果の高い施策といえるでしょう。
ビジュアルIVRの導入を検討する際は、これらのポイントを踏まえ、自社のニーズや予算に合ったソリューションを選定することが重要です。
まとめ
ビジュアルIVRは、従来の音声IVRの課題を解決し、顧客の利便性を向上させる革新的なシステムです。ユーザーが直感的に操作できるだけではなく、自己解決率も上昇することでオペレーターの負担軽減にもつながります。
その結果、コールセンターの業務効率化やコスト削減といったメリットを享受できるだけでなく、顧客満足度の向上にも貢献します。
一方で、ビジュアルIVRの導入には、初期費用や運用コストがかかること、システムの設計・管理に専門知識が求められることなどの課題も存在します。
特に、高齢者やデジタルに不慣れなユーザーへの対応や、プライバシー保護の観点から適切なデータ管理が必要である点も考慮すべきポイントです。
そのため、導入前には自社のニーズを明確にし、コストや運用面での課題をしっかりと把握するようにしましょう。
また、近年のAI技術やデータ分析の進化により、ビジュアルIVRはさらに高度化し、顧客ごとに最適化されたサービス提供が可能になりつつあります。
今後、リアルタイムでの対応改善が進むことで、より使いやすく効果的なソリューションへと発展していくことが期待されます。
ビジュアルIVRの導入を検討している企業は、そのメリット・デメリットを十分に理解し、自社の業務課題に適したシステムを選定することが求められます。適切な設計と運用によって、顧客対応の質を向上させ、企業の成長へとつなげていきましょう。
最後に
ビジュアルIVRには、クラウド型で提供されるタイプもあります。
クラウド型のビジュアルIVRは、自社でサーバーを構築・運用する必要がなく、インターネット経由でサービスを利用できるのが大きな特長です。導入の手間やコストを抑えつつ、柔軟な設定変更や運用が可能なため、顧客満足度の向上や業務効率化にもつながるとして、多くの企業が導入を進めています。
また、クラウド型ビジネスフォン「トビラフォン Cloud」は、ビジュアルIVRでも利用されているSMS送信機能を取り入れています。
IVRによる番号選択後、70文字までのテキストやURLをショートメッセージで自動送信することができ、予約フォームや店舗住所などのURLを自動送信することで電話応対の手間を削減します。
導入は簡単で、既存の電話番号をそのまま使いながら、クラウド上で柔軟に設定変更が可能です。ビジュアルIVRの導入を検討中の方は、「トビラフォン Cloud」のサービスも、ぜひチェックしてみてください。